ウインブライト

 香港と中山芝中距離重賞マエストロのウインブライト(牡6=畠山)が中山記念3連覇に挑む。

 ウインは冠名。「勝つ、優勝する、勝利、白星、単勝」だから、競走馬にふさわしかろう。Brightは「輝いている、明るい、鮮やかな、快活な」など、光あふれる生き生きとした様子。父ステイゴールド(金色のままでいる)、母サマーエタニティ(ずっと夏)なので、両親の名前のイメージをうまく取り込んだ。また18世紀ぐらいから口語で「機転が利く」とか「精神的に大人である」という意味にも用いられる。なぜブライトが香港と中山で強いか。環境の変化や小回りでもまれても平気な精神的な強さを持つから。まさに名は体を表している。

 

ハートランドヒリュ 2003年5月28日スポニチ(関西版)

 スズカルパンが2月15日の松籟Sで99戦目。ハートランドヒリュ以来のJRA100戦到達まであと1戦。というわけでハートランドヒリュ、85戦目当時の記事。

 

 最後方ポツン、直線猛然と…。届くかどうか?届かない方が多い【4・9・8・64】が、その追い込みはひたむきだ。関西1000万芝と言えばハートランドヒリュ(牡7=清水久)。ただ今85戦、ますます元気。
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 先ごろ引退した1000万ダートの主ナカトップトウコウもそうだが、この厩舎は味のある差し馬を輩出してきた。イソノウイナー、オースミレパード…。
 「逃げ馬はバタバタになるまで走らなければならない。その点で差し馬の方が長持ち。そんなタイプが好みだな。この馬の場合はとにかくタフなのもあるが」と清水久師が言う。デビュー以来、2カ月以上休むことなく4年半。2歳2戦、3歳19戦、4歳20戦、5歳16戦、6歳19戦、7歳の今年9戦なお継続中。
 「入厩当時に少しアクシデントがあったが、それ以来コレと言う不安がない。たいしたもんだ。100戦を目指したいな」
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 後方でじっくりと脚をタメる姿が印象的。おとなしい馬かと思ったら、以前はうるさく森茂助手を振り落とすこともあったそうだ。
 森助手は「5歳ぐらいからかな。ようやく落ち着きが出てきた」という。
 主戦の菊沢仁も「結構、がっちり抑えて脚をタメてますよ。うまく折り合うといい脚を使う」と実戦での戦術を明かす。
 「少々負け続けていてもポンと来る。距離とか関係なく、流れが速くなって展開向けば」が陣営の一致した見解。馬券的には難儀なタイプだが、来れば好配。100戦まであと15戦。がっつかずじっくりと、暖かく見守ることとしよう。
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 大レースの勝利をみやげに若くして種牡馬入り。それがサラブレッドの花道だろう。しかし細く長く戦う競走馬もいいではないか。
 「最後方からハートランドヒリュです…」
 この決まり文句を聞くと安心する。きょうも平和だと。直線向いて追い込むハートランドヒリュ。届けばうれしいが、届かなくても応援したくなる。いつも殺伐としている馬券好きのオアシス。それがハートウォーミングな競走馬ハートランドヒリュだ。

 

モジアナフレイバー

 名前からして穴っぽい大井・福永敏厩舎所属の5歳馬モジアナフレイバーがフェブラリーSに出走する。暮れの東京大賞典では3着と健闘。3月末にはドバイ遠征も控えている期待の地方馬だ。

 Mogianaはブラジルの地名で、コーヒーの産地。サンパウロとミナスの州境のサンパウロ側にあり、1875年から1971年までブラジルコーヒーの輸送に使われたモジアナ鉄道が地名の由来。Flavorは「味わい」とか「おもむき」、古い用法では「香り」の意味もある。馬主の尾田信夫氏の冠名だが、モジアナフレイバーといえばブラジルコーヒーの味わい。シャープでさわやか、好バランス。JRAでも穴になるか。

 

アルメリアブルーム

 遅咲き。昨年秋にオープン入りして以降、重賞戦線に打って出た6歳牝馬アルメリアブルームが京都記念に出走する。

 母アルメーリヒ(Allmahlich)はドイツ語で「徐々に」、本馬はArmeria Bloomでアルメ―と頭韻は踏むが意味の関係はない。ブルームは「開花、花盛り」。アルメリアは細長い茎の先端に球状の花を咲かせるイソマツ科の植物。和名ハマカンザシ、学名Armeria maritima(海辺のアルメリア)とあるように、浜辺によく見られる。別名シーピンク(Sea Pink)で、馬のアルメリアブルームもピンク帽の8枠5戦3勝だから、まんざらでもない。遅咲きのアルメリアが冬の淀で咲き誇る。

 

レッドヴェイロン

 きょうだいでJRA重賞11勝を挙げる、母エリモピクシーの子どもたち。とりわけ東京芝マイルは一族の得意コース。レッドヴェイロン(牡5=石坂正)が東京新聞杯でトロフィーをまた一つ積み増すか。

 ヴェイロン(Veyron)はフランス人のレーサー、ピエール・ヴェイロンの名にあやかった命名だろう。ブガッティ・タイプ57Cを駆って1939年のル・マン24時間を優勝した。この名レーサーの姓をいただいたのが超高級車ブガッティ・ヴェイロン。完売したそうだが、2009年11月の定価が1億7900万円。レッドヴェイロンの現時点の獲得賞金が1億円ちょっと。ヴェイロンでヴェイロンが買えるよう頑張れ。

 

エイティーンガール

 シルクロードSにエイティーンガール(牝4=飯田祐)が出走予定。eighteenは18、girlが単数形なので「18歳の少女」と解すべきか。馬は4歳だが。ともあれEighteenといえば松田聖子だろう…と書いたところで、それがどれぐらい通用するのか不安になってきた。「風は秋色/Eighteen」は聖子ちゃんの3枚目のシングルで、発売を調べると…1980年。ちょっとあなた、もう40年前なんだけど。聖子ちゃん今年で58歳なんだけど。時代が大きく下ってペール・ウェーヴス(イギリスのロックバンド)の曲Eighteen(2018年)が由来かもしれない。18歳は繊細で感傷的なので、時代を超えて歌われるのだ。

 

シルヴェリオ

 銀に見えて銀にあらず。若駒Sに出走するシルヴェリオ(牡3=池添学)だ。母シルヴァースカヤの名は、その父シルヴァーホーク(銀色の鷹)+母ブブスカヤを合成。母名と頭韻を踏むもののSilverioはSilver(銀)とは関係ない。この馬名はラテン語の人名Silveriusのイタリア語バージョンで、その語源silvaは「森、林、果樹園」のこと。同名に聖人に列せられた教皇シルウェリウス(聖シルヴェリオ)がおり、由緒ある名前と言えよう。同根から派生した名前にはシルヴェスターがある。がぜん「イタリアン・スタリオン」としてチャンプを破ったり、怒りの脱出をするマッチョっぽく見えてくる。