クラサーヴィツァ

 フローラS登録のクラサーヴィツァ(牝3=武井)は、日経新春杯Vグローリーヴェイズによって脚光を浴びるメジロラモーヌ牝系。この馬の祖母であるラモーヌはフローラS前身の4歳牝馬特別を勝っている。

 この馬名はКрасавицаとキリル文字でつづるロシア語。「美人、美女」の意味。形容詞「美しい」はкрасивыйで、「赤い」を意味するкрасныйとよく似ている。それはロシアが共産主義に傾倒したため…では全くなく、スラヴ祖語の「美しい」であるкрас―の語源が、印欧祖語で「火、燃える、火明かり」を意味する*kerゆえ、時が下って「赤」と「美しい」の両義となったらしい。

 

サートゥルナーリア

 ホープフルS勝ちサートゥルナーリア(牡3=角居)が年明け初戦で皐月賞に出走。

 ローマ神話。サートゥルヌスはユピテルに王位を追われてイタリアに逃れ、その地の王となり「黄金時代」の世を治めた。人々は慈悲あふれる統治をたたえ、毎年12月17日からサートゥルヌスを祝す祭り「サートゥルナーリア」を催した。公事は休み、宣戦布告や刑罰執行も延期、贈り物を交わし合い、主人と下僕は地位を交換して数日間陽気に騒いだ。

 サートゥルヌスはゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」のせいか印象いまいちだが、実は農耕と文明の神で太古の賢王でもある。兄エピファネイア(1月6日の公現祭)と祭りつながり。

 

アクアミラビリス

 エルフィンSを上がり3F33秒3の強烈な末脚で勝ったアクアミラビリス(牝3=吉村)は、桜花賞で驚異の末脚を再現できるか。

 この馬名はラテン語。Aquaは「水」、Milabilisは「驚異の、奇跡の」。中世ヨーロッパの修道院は医療院としての一面があり、消毒や清浄用に使われた香料付きの水をアクアミラビリスと呼んだ。18世紀に調香師のヨハン・マリア・ファリナがケルンで製造した「香り付きの水」が大変な評判となり、欧州のほとんどの王族が使うに至った。小瓶一つが公務員の俸禄半年分で取り引きされ、「ケルンの水」(Eau de Cologne=オーデコロン)はお値段的に「驚異の水」となったとか。

 

エアウィンザー

 エアウィンザー大阪杯に出走。全兄エアスピネルはGⅠ【0214】だが、弟はGⅠ初挑戦でその壁を破れるか。

 Windsorは英国の地名。ロンドンの西にあるバークシャーに、女王エリザベス2世が週末過ごすウィンザー城がある。もとは11世紀にノルマンディー公「征服王」ウィリアム1世がテムズ川南岸に築いた城壁、とりで。その当時の古英語で地名はWindlesoranとなっており、逐語的に訳すと「巻き上げ機(windlass)のある土手、傾斜地」。その時代には船着き場と荷さばき場があったのかもしれない。レース名の大阪は、語源が大坂、つまり傾斜地に通じるので、ウィンザーと大阪は相似なのだ。

 

ミスターメロディ

 阪急杯7着のミスターメロディが高松宮記念で反撃の旋律を奏でる。

 父スキャットダディ。スキャットはジャズの歌唱法(シュビドゥビとかルルルとかアドリブで歌うもの)で、その連想から命名。Mr. Melodyはアメリカのジャズボーカリストナタリー・コールの曲名。歌詞はストレートなラブソングだ。you do the sweetest thinngs to me(あなたは私のしてほしいことをしてくれる)ので躍進の期待をかけつつ、you got me hummin' to your crazy beat(最高のビートに思わずハモっちゃう)ような脚さばきに見とれよう。曲の後半にはシュビドゥビとご機嫌なスキャットが流れるぞ。

 

コスモカレンドゥラ

 レース名に春を冠した皐月賞TR・スプリングSにコスモカレンドゥラ(牡3=田中博)が登録。

 Calendulaは花の名前。邦名キンセンカ、英名ポットマリーゴールド。春に黄色やオレンジのかれんな花を咲かせる。その花の色をイタリア語ではgiallo vivo(鮮やかな黄色)とかrosso-arancio(レッドオレンジ、赤橙色)と表現するが、そのものずばりcalendula色とも言う。ファッション界でカレンドゥラ色と言えば赤みがかった黄色のこと。また発音の通りカレンダーと同語源。春の訪れを知らせる「暦の花」の側面があるためかと思う。コスモカレンドゥラもそろそろ開花の季節だ。

 

アウィルアウェイ

 馬名は数あれど、これほど命名の妙を感じさせるものはそうない。フィリーズレビュー出走のアウィルアウェイ(牝3=高野)。父ジャスタウェイ、母ウィルパワーで、両親の名前の一部を組み合わせただけだが、それでいて[Where there is a will, there is a way.]という金言が導き出される。意志あるところに道はあり。古今東西問わぬ真理とあって上杉鷹山の「なせば成る」、朱子語類の「精神一到、何事か成らざらん」、後漢書・耿弇伝の「有志者事竟成也(志あるものは事ついに成るなり)」、「史記・李将軍伝」の「中石沒鏃」から通俗した「一念岩をも通す」など、類例は枚挙にいとまがない。当てたい、その意志が大事だ。