グローリーヴェイズ

 香港国際競走で、香港ヴァーズというレース名は不思議ではないか?「香港瓶」。実は香港カップなら勝ち馬に盃(カップ)がもらえるところ、香港ヴァーズは花瓶(vase)なのだ。

 Vaseは花瓶、あるいは「ツボ」の意味。日経新春杯出走のグローリーヴェイズはGlory(栄光)+Vaseで、すなわち栄光のツボ。ここは花瓶ではなくツボでなくてはならない。なぜなら由来が母メジロツボネからの跳躍的な連想ゆえ。ちなみに母名は三重県の局ヶ岳から。4勝して同世代のメジロ+山シリーズで出世頭だった。局ヶ岳の名の由来は遠くから眺めるとお局さま(高貴な女性)がたたずむ姿に見えるからとか。

 

パフォーマプロミス

 さあ有馬記念。パフォーマプロミスは前走のアルゼンチン共和国杯が完勝だった。穴馬として有り? アル!

 performは「演じる、果たす」。promiseは「約束」。日本語では確かに約束を果たすことができるが、英語においてpromiseは守る(keep)ものであり、実行する(make good)

ことはあっても、performはしない。あえて言うならperform as promised(約束通りにする)だが、まあそれはいいのだ。この馬名は破格ゆえ「果たす」ことへの執念がうかがえるというもの。母がアイルビーバウンド。I'll be bound.は古風な表現で「間違いない、きっとだよ」。

 

ファンタジスト

 創造性のあるプレーをするサッカー選手はイタリア語でファンタジスタ。語源はそれと一緒ながら一文字違うファンタジストが朝日杯FSに出走する。こちらは英語だ。

 ファンタジストの語源はイタリア語のfantasiaで「空想、想像力」。そこから「幻想曲」や「幻想的な(文学)作品」の意味が派生した。Fantasistは「幻想的な作品を作る作曲家・作家」のこと。作家なら「指輪物語」のトールキンとか「ナルニア国物語」のルイスあたりか。一方で「現実と想像の区別がつかない夢想家」の意味もあるが、ブレークスルーを成し遂げるのは得てしてそういった人。

 

香港国際競走

 香港国際競走における馬名と香港名を比べてみよう。香港カップのタイムワープは馬克羅斯。馬克はマルク、羅斯はローズの中国語での当て字。タイムワープ→マルクローズにワープ。マイルのモズアスコットは魔族雅谷。魔族の中国語での発音が「モズ」なだけで、他意はないと思う。Ascot(英国の地名)は「雅士谷」。ヴィブロスは強擊。文字通りハードヒッティングの意味で、ΒΝΒΛΟΣ(ギリシャの地名)とは無関係。スプリントのミスタースタニングは紅衣醒神。勝負服が赤地に桃玉霰で、紅衣は冠名では。Stunningは「気絶させる(ほど凄い)」。醒神は口語で「はっきり目が覚めていない」。

 

パヴェル

 パヴェル(セン4=米国モラ)は前走のレース後、厩舎がオニール→モラに変更。モラ師はケンタッキーダービーのデュアルウィナー(アイルハヴアナザーナイキスト)であるオニール師の右腕を務めており、オニール師はフリートストリートダンサーでJCダートを勝っている。日本のダートと米国のダートの違いなど承知の上での遠征だ。怖さはある。

 Павелは人名。キリル文字で分かる通りロシア系の男性名で英語名だとPaul(ポール)。なので実はパヴェルの名をいただく著名人はかなり多い。ロマノフ朝ロシア帝国がらみで皇帝パヴェル1世、ロシア帝国陸軍の騎兵大将パヴェル・レンネンカンプ。チェコのサッカー選手であるパヴェル・ネドベド。語源的にはラテン語paulus(小さい)だが、皇帝やら大将やらチェコの英雄やらいるし、この馬自身も3走前にダート9FでGⅠ勝ちがありなかなかの大物。その勝ち時計は1分49秒21だ。

 

 

サンダリングブルー

 英国からジャパンCに遠征してきたサンダリングブルー(セン5=ムニュイジエ)は「クラス2ハンデ戦」でモマれて力をつけた叩き上げセン馬。日本の馬場に合うのか、通用するのか。興味深い。

 Thundering Blueは直訳すれば「雷鳴の青」。雷は青く光るとも言えるが、サンダーは「雷鳴」、あくまで音であって雷光(ライトニング)ではない。オーナーの本業が海運保険業で、勝負服が海をイメージする「青たすき」。そのあたりの連想かも。なおブルーだが芦毛。調教師のムニュイジエ師はフランス生まれ。ジョン・ダンロップ厩舎でアシスタントをへて英国で14年に開業した。Menuisierは「大工」。愛馬をどう築き上げるか、お手並み拝見だ。

 

ミッキーグローリー

 古馬になって本格化したディープインパクト産駒ミッキーグローリー(牡5=国枝)がマイルCS制覇を狙う。

 ミッキーは冠名。グローリーは「栄光、名誉、名声」。gloryの語源はラテン語gloriaで、これはギリシャ語ΚΛΕΟΣ(クレオス)と同根。クレオスは「名声」だけでなく、「報告、いい知らせ」、さらに「うわさ、流言」の意味もある多義語。もとがΚΛΥΩ(クルオー、聞く)の派生ゆえ。聞いた内容は名声にも、流言にもなるわけだ。穴人気必至のグローリーだが、流言の徒で終わるか、本物の名声を得られるか。正念場だ。なお母メリッサ(ΜΕΛΙΣΣΑ)はギリシャ語で「みつばち、はちみつ」の意味。