アグネスアンジュ

 紅梅Sに出走するアグネスアンジュ(牝3)は、父アグネスタキオン、母アグネスバラード。30年以上にわたる「長浜厩舎のアグネス」ならではの血の物語を秘めている。
 この馬の新馬勝ちはレースぶりが良かった。スタートこそ出負けしたが、すんなりポジションを巻き返して最後もひと伸び。
 「あの形だと脚がなくなるものだけどね。最後もしっかり伸びたし、着差以上の内容だったと思う」
 影山助手も高く評価している。今回は芝1200mから1F距離が延びるものの「マイルぐらいまでは問題なさそう」と期待をかける素質馬だ。
 ここで、この馬の血統に注目したい。その営みは、さながら大河小説、『チボー家の人々』ならぬ『アグネス家の馬々』だ。父タキオンがフローラ〜レディーとさかのぼり、母バラードはルミエール〜シャレード〜レディー。オークスアグネスレディーを始祖として、すべてアグネスの冠名、長浜厩舎(レディー、シャレード長浜博之師の父・彦三郎師)。アグネスレディー3×4のクロスで、厩舎ゆかりもゆかり、長浜アグネスの結晶だ。
 「父も母も、その母も全部、厩舎にいたからね。めったにないパターンだし、こういう馬が走ってくれたらうれしい」
 確かに活躍した時の陣営の喜びは、歴史に裏打ちされたものになるだろう。たとえば母バラードについて影山助手は「お母さんは力があったのにテンションが高すぎて出世できなかった。この馬(アンジュ)も少しテンションは高めだが、今は落ち着いてる。いい具合に父の方と融合したかな」と話す。母方は母1勝、祖母未勝利と低空飛行が2代続いたものの、一族の泰斗タキオンの血を注入したアンジュが活躍するなら、これに如くはなし、だ。
 いずれにせよ大河小説はここで完結するわけではなく、アンジュの章が華やかになればなるだけ、アグネス家の繁栄は続くことになる。