エアウィンザー

 エアウィンザー大阪杯に出走。全兄エアスピネルはGⅠ【0214】だが、弟はGⅠ初挑戦でその壁を破れるか。

 Windsorは英国の地名。ロンドンの西にあるバークシャーに、女王エリザベス2世が週末過ごすウィンザー城がある。もとは11世紀にノルマンディー公「征服王」ウィリアム1世がテムズ川南岸に築いた城壁、とりで。その当時の古英語で地名はWindlesoranとなっており、逐語的に訳すと「巻き上げ機(windlass)のある土手、傾斜地」。その時代には船着き場と荷さばき場があったのかもしれない。レース名の大阪は、語源が大坂、つまり傾斜地に通じるので、ウィンザーと大阪は相似なのだ。

 

ミスターメロディ

 阪急杯7着のミスターメロディが高松宮記念で反撃の旋律を奏でる。

 父スキャットダディ。スキャットはジャズの歌唱法(シュビドゥビとかルルルとかアドリブで歌うもの)で、その連想から命名。Mr. Melodyはアメリカのジャズボーカリストナタリー・コールの曲名。歌詞はストレートなラブソングだ。you do the sweetest thinngs to me(あなたは私のしてほしいことをしてくれる)ので躍進の期待をかけつつ、you got me hummin' to your crazy beat(最高のビートに思わずハモっちゃう)ような脚さばきに見とれよう。曲の後半にはシュビドゥビとご機嫌なスキャットが流れるぞ。

 

コスモカレンドゥラ

 レース名に春を冠した皐月賞TR・スプリングSにコスモカレンドゥラ(牡3=田中博)が登録。

 Calendulaは花の名前。邦名キンセンカ、英名ポットマリーゴールド。春に黄色やオレンジのかれんな花を咲かせる。その花の色をイタリア語ではgiallo vivo(鮮やかな黄色)とかrosso-arancio(レッドオレンジ、赤橙色)と表現するが、そのものずばりcalendula色とも言う。ファッション界でカレンドゥラ色と言えば赤みがかった黄色のこと。また発音の通りカレンダーと同語源。春の訪れを知らせる「暦の花」の側面があるためかと思う。コスモカレンドゥラもそろそろ開花の季節だ。

 

アウィルアウェイ

 馬名は数あれど、これほど命名の妙を感じさせるものはそうない。フィリーズレビュー出走のアウィルアウェイ(牝3=高野)。父ジャスタウェイ、母ウィルパワーで、両親の名前の一部を組み合わせただけだが、それでいて[Where there is a will, there is a way.]という金言が導き出される。意志あるところに道はあり。古今東西問わぬ真理とあって上杉鷹山の「なせば成る」、朱子語類の「精神一到、何事か成らざらん」、後漢書・耿弇伝の「有志者事竟成也(志あるものは事ついに成るなり)」、「史記・李将軍伝」の「中石沒鏃」から通俗した「一念岩をも通す」など、類例は枚挙にいとまがない。当てたい、その意志が大事だ。

 

カントル

 全兄弟が2年連続で弥生賞に出走するのはなかなかの難事。ワグネリアンは昨年2着。アンコールで出てきた全弟カントル(牡3=藤原英)はさて何着?

 母ミスアンコールが音楽を連想させることから、兄は「ワーグナー信奉者」、弟(Cantor)はシンプルにラテン語で「歌手」と命名された。ローマの詩人ホラティウスが「風刺詩」で、歌手についてこう刺している。あらゆる歌手には欠点がある。友に囲まれれば頼まれても歌わず、頼まれもしないのに歌いやまない、と。買えば来ず、買わねば来る…とベクトルは似る。カントルは2→1→3→1着と1走おき白星で今回は――。気まぐれな歌手とはうまく付き合いたい。

 

エントシャイデン

 インティが7連勝で一気にダート界の頂点に上り詰めた。短距離界にも新星が現れるか。阪急杯に条件級3連勝のエントシャイデン(牡4=矢作)が登場する。

 この馬名はドイツ語。Entscheidenは「決める、決断する」。語源的にはentが「~から」、scheidenは「切る」由来の「別れる」なので、成り立ちが英語のdecide(~から、離れる+切る)と相似。そもそも「決」という漢字も「水が堤防を抉(えぐ)って切り口が生じる」という意味の会意兼形声文字なので、古今東西を問うことなく「決める」は「切る」の延長だ。一気の相手強化だが、切るか、買うか。エントシャイデンへの決断が馬券的中の成否を分けそうだ。

 

オメガパフューム

 いささかフェミニンな名前かと思う。フェブラリーSに臨むオメガパフューム(牡4=安田翔)だ。この馬名を聞くと自ずとテクノ系の3人組ユニットが思い浮かぶ。ポップな名前に加えて、ダート馬としては軽量ボディーの芦毛で、ダンサブルおしゃれ男子と言えよう。

 オメガは冠名。Perfumeは「香水、香り」。母オメガフレグランス(Fragranceは芳香、香料)、その母ビューティーメイクとコスメ系でさかのぼれる。昨年のフェブラリーS勝ち馬ノンコノユメもフェミニン系の馬名で軽量の脱マッスル系だから、共通点は多い。現セン馬のノンコノユメは4歳牡馬時にフェブラリーS2着だったが、さて。