追悼シーザリオ 2005年5月22日オークス

角居厩舎が最終出走となるその日に、シーザリオ急死の一報。とても印象的な馬。オークスを勝った時の記事をサルベージした。福永自身も認めていますが、うまく乗れなかったけど馬が強くて勝った。駆け引きや戦術を力で叩き潰した強さ。昨今は繁殖牝馬としての優秀さが強調されることが多いのですが、競走馬としても一級品でした。

 

 騎手の駆け引き、秘術を尽くし合った一戦。そんなオークスだ。逃げて超スローに落とし一発を狙った武幸四郎エイシンテンダー。道中引っ掛かるのを懸命になだめて末脚を引き出したデザーモディアデラノビア。さらに人馬の英知と力を出し切ったのが武豊エアメサイア、そして福永シーザリオだった。
 福永は「逃げてもいいと思っていた」というが、一完歩目で右隣の武豊エアメサイアに遅れを取る。その瞬間だ。豊はシーザリオの機先を制してフタ。外の先行馬を行かせて自らは好位置をキープし、シーザリオを後方に追いやることに成功した。福永がこう述懐する。
 「失敗した。こうなったらイヤだという危惧していた形。ユタカさんにやられた」
 手の内を知り尽くしている者同士。最初の立ち合いはユタカが制した。しかし、ここからが福永の腹の据わったところ。
 「焦っても仕方ない。スローだし、他と接触しないよう折り合いに専念しました。もう直線勝負しかない、と…」
 進路を確保するまで、我慢に我慢を重ねての末脚勝負。上がり3F33秒3!追い出しのタイミングはここしかない刹那。それを逃さなかった。
 「追い出してからブレーキをかけることがないよう、道中辛抱してくれと言い聞かせた。届いたけど、馬には必要以上に厳しいレースをさせてしまいましたね。決していい仕事とは言えない。僕が思っていた以上に強かった。頭が下がります」
 福永から出るのは反省の弁ばかり。しかし、見せ場だけではなく、勝利を求めた結果が道中の我慢につながった。大本命馬(単勝1.5倍)でギリギリ我慢できることが超一流の証し。
 敗れた武豊が「あの競馬ができて差されるとは…」と絶句する。勝っていればおそらく会心の騎乗。第一人者の想像を超えるシーザリオの強さ、底力を引き出したのは、福永祐一の技術とハートにほかならない。