ビッシュ

 史記「秦始皇紀」の一節。始皇帝の死後、悪臣趙高が鹿を二世(皇帝胡亥)に献じて「これは馬です」。二世「そんなあほな。鹿でしょ」。左右の臣は黙る者、権勢ある趙高におもねって馬という者、正直に鹿という者に分かれた。そして鹿と答えた臣は処刑された。
 フローラS出走のビッシュ(牝3=鹿戸)で、「鹿を指して馬となす」の故事を思い出すのは仕方ない。Bicheはフランス語で「牝鹿」。彼女は馬でありながら(名前が)鹿だ。しかしビッシュはばか(愚か者の意味の「ばか(馬鹿)」の語源は先の故事と無関係)ではない。馬と鹿の合成動物といえば麒麟(きりん、鹿の体に馬の蹄を持つ)がそう。ディープ産駒の麒麟児なのだ。