ディープインパクト産駒に栗毛のいない理由

 もしかしたら意外に知られていないかも。ディープインパクト産駒の毛色の話を。あるとき「ディープ産駒に栗毛はいませんからね」と筆者が言ったら、「なんで?」と尋ねられたので解説。
  ◇  ◇  ◇
 2012年8月末までJRAに登録されたディープインパクト産駒は352頭。うち鹿毛238頭、黒鹿毛57頭、青鹿毛33頭、青毛17頭、芦毛7頭。栗毛は0頭。なおディープ自身は鹿毛だ。
 馬の毛色にはメンデルの法則にそって、「栗毛の両親からは栗毛しか生まれない」とか「芦毛は両親のどちらかが必ず芦毛」とか遺伝の約束がある。芦毛のディープ産駒は母が必ず芦毛だ。
 ごく大ざっぱに説明してみる。芦毛にかかわる遺伝子をG/g、ほか(鹿毛、栗毛、青毛)の毛色にかかわる遺伝子をE/e、A/aとする。大文字がドミナント(優性)を示す。遺伝子は2文字で1セット、2文字のうちどちらかが遺伝する。ディープの遺伝子はggEEAaで間違いない。アバウトなサラブレッドの毛色法則は①Gがあれば芦毛②ggでEとAがあれば鹿毛系③ggでEがあってaaなら青毛④ggでeeなら栗毛―というもの。
 ggEEAaのディープの場合、産駒に伝わる遺伝子はgEAかgEaの2通り。Gの発現(芦毛産駒)は母方の力を借りるしかない。eを持たず必ずEを伝えるので、産駒がeeになることはなく栗毛は生まれない! 青毛は自身からaが伝わり、母方からもaが伝わった場合にのみ発現ってこと。青毛の少なさを考えると、aは希少なんでしょう。
(補足)
ほかにggEEAaの種牡馬フサイチコンコルド鹿毛
ggEEAaでAが青鹿毛変異の種牡馬マンハッタンカフェマイネルラヴ青鹿毛)→産駒は黒っぽい馬多め、とくにマンカフェは特異なぐらい
ggEEAAの種牡馬サドラーズウェルズダンチヒダンシングブレーヴコマンダーインチーフホワイトマズル鹿毛)→産駒に栗毛だけでなく青毛も出ない