戦火の馬

戦火の馬|ブルーレイ・デジタル配信|ディズニー
 スティーブン・スピルバーグ監督『戦火の馬』がロードショー中。映画と馬は昔から相性がいい…ということで、本作をサカナに本筋とほとんど関係ない馬に関するよもやま話。
 馬の邦画で『優駿 ORACION』(1988)という作品があった。宮本輝の『優駿』が原作だ。クライマックスのダービーのシーンは、前年ダービーの実際の映像を使用するべく撮影されたが、87年ダービー馬は四白流星(手脚の先と額が白い)という派手な出で立ちの栗毛馬メリーナイスオラシオン幼年時代を演じる子馬を探すのが大変だった…なんてエピソードがある。
 『戦火の馬』の主人公(馬)ジョーイも四白流星で、この出で立ちが映画後半で重要な役割を果たす。ところでジョーイは鹿毛だが、私が見た字幕では当のシーンで毛色の訳が「鹿毛」でなく「栗毛」になっていた。日本人には四白流星と言えば栗毛のイメージ? 誤訳にメリーナイスの影響を見たかも。
 四白流星の鹿毛馬といえば、だいぶ古いが貴公子タイテエム。この馬がデビュー前、当時は「派手なルックスは大成しない」というジンクスがあったとか。四白はツメが弱いとか聞いたこともあるが、実際どうかは知らない。流星に関しても古くから色んな言い伝えがあり、つまり人は<有徴>に意味を与えるものだ。
 流星の言い伝えのひとつが『三国志演義』の劉備の愛馬・的盧(てきろ)。「額に白点の馬、これを的盧といい、主人に災いをなす」凶相という。英雄・劉備は的盧の馬上で窮地に陥った時「どうして馬に運命を妨げられようか」と、むち打って危機を脱したそうだが。さて的盧に似たスティグマを持つジョーイにかかわった英国陸軍大尉や、ドイツ人兵士兄弟の運命やいかに。『戦火の馬』は感動大作だが、感動を織りなすファクターはいくつかの不幸とも言える。
 ともあれ『戦火の馬』は少々上映時間が長いが親子(小学校中学年以上かな)で見るのが良さそう。
 ◇なお主人公(馬)ジョーイは元競走馬ファインダーズキー。父リンゼイズロベルト(ロベルト直子のマイナー種牡馬)、母スルーザキーホール(母の父キートゥザミント)。1999年産でタニノギムレットシンボリクリスエスなどと同期。日本ではロベルト当たり年だが、この馬は未勝利だった。近親にレッドデイヴィスデルタブルースダンシングブレーヴなんかも同牝系。