レッドガラン

 スポニチ京都金杯の有力馬レッドガラン(牡6=安田隆)の馬名は、冠名Red+Galant(フランス語)。ガランは文語的あるいは音楽用語として「優雅な」。通常の文脈だと「(特に女性に)親切な、愛想がいい」。牝馬に弱い…と名は体を表すが、取り立ててそんなことはない。同根の英語ギャラント(gallant)は「勇敢な」という意味なので、果敢に攻めてほしいもの。いずれも語源的には古フランス語のgale(お祭り騒ぎ)を通るので正月っぽさもある。さらに言えばガランの第一印象は「伽藍(がらん=寺院の建物)」ではなかろうか。正月競馬では、レッドガランの馬券を初詣のさい銭としてもいいだろう。

 

カレンブーケドール

 「花言葉」は18世紀前半、トルコ駐在の英国大使夫人メアリー・ウォートリー・モンタギューが英国にもたらした。彼女はbouquet(花束)というフランス語も紹介、花束のプレゼントが流行した――。有馬記念レンブーケドール(牝4=国枝)にちなんでそんなトリビアを紹介。馬名は冠名+フランス語「金の花束」。重賞【0ー5ー1ー2】、G1【0ー3ー0ー1】と銀メダルづくが、その名にフランス語「金の」を意味するd'orが入っている。有馬で艮(うしとら=深夜から夜明けの時間帯)を脱して、日の出(母ソラリアの名は「日光浴室」の意味がある)とともに金メダルを得よう。彼女には花言葉「勝利」のグラジオラスのブーケを贈りたい。

 

レッドベルオーブ

 中京芝マイルの未勝利1分33秒1、阪神のデイリー杯2歳S1分32秒4。連続レコードVの離れ業を演じたレッドベルオーブ(牡2=藤原英)が朝日杯FSに出走。未来は有望だ。

 母レッドファンタジアの子どもは初子の長女レッドベルローズから、全て冠名レッド+ベル(フランス語「美しい」)でそろっている。次女レッドベルディエス、長男レッドベルジュール、そして第四子の次男レッドベルオーブ。上から順にフランス語でバラ、女神、1日と来てAubeは「夜明け」。その語源はラテン語albus(=白)で、馬名に赤(レッド)と白の両方を含み、勝負服「赤地、白星散、袖白一本輪」に通じている。

 

ホットキングプローン

 香港スプリントで注目は前哨戦のGⅡを制したホットキングプローン(騸6=サイズ)。香港表記「旺蝦王」。旺は「盛んな様子」。懐かしき安田記念フェアリーキングプローン(靚蝦王)と同馬主。冠名は馬主の好物(エビ)から。香港マイルは18~19年に無双した美麗傳承(ビューティージェネレーション、傳承=伝承)、そのビューティーに2連勝中で14戦13勝の金鎗六十(ゴールデンシックスティ、鎗は武器のヤリ)、前年覇者の頌讚火星(アドマイヤマーズ、頌讚=称賛)と、馬名と香港表記が一致しやすい各馬の楽しみな一戦。香港Cに出走するアイルランドのマジカルは香港表記「變魔術」。變は「変」の繁体字。「魔術」だけでいいのでは…。

 

アナザートゥルース

 ”There is always only one truth.”
 見た目は子供、頭脳は大人な名探偵の決めぜりふ「真実はいつもひとつ」の英語。これは事件に関してのことで、例えば競馬予想には各人の真実がある。チャンピオンズC出走のアナザートゥルース(セン6=高木)は父アイルハヴアナザー(おかわりください)と母キョウエイトルースの名前を組み合わせた馬名。兄サウンドトゥルー(説得力がある)にも通じる「もう一つの真実」。競馬予想における各人の真実は、結果という事実にだいたい打ちのめされるが、僕の真実はアナザートゥルース。
 ”The true answer is nothing but one.”
 真実はいくつあっても正答は一つ。

 

インディチャンプ

 マイルCS出走の母ウィルパワー兄妹の馬名が好きだ。妹アウィルアウェイは母名+父ジャスタウェイの名で「意志あれば道あり」という金言。兄インディチャンプは文字通り「インディカー・シリーズのチャンピオン」で、14年の年間王者が母と同じ名のウィル・パワーというドライバーだから。ウィル・パワーはインディ500でも18年に優勝(17、20年の優勝が佐藤琢磨)。Powerは普通「力、能力」の意味だが、名字に用いられた場合の語源は古フランス語で、北フランス・ピカルディ地方の町「Poisの出身者」。Poisは「魚」のことで、町が水量の多い川に恵まれたため。魚沼市新潟県)みたいなものか。

 

センテリュオ

 牝馬だてらにオールカマーを制したセンテリュオ(牝5=高野)がエリザベス女王杯に出走。昨年4着からの躍進を期している。

 Centelleoはスペイン語で「きらめき、(星の)またたき、火花」で母アドマイヤ「キラメキ」の名をスペイン語訳したもの。語源はラテン語scintilla(火花)で、同語源の英語はscintilla(シンチラ=火花)と原型をとどめて伝わるが、おそらくカタルーニャ語経由のスペイン語では語頭のSが消失した。科学(ラテン語=Scientia、英語=Science、スペイン語=Ciencias)にも同様の現象が見られる。スペイン語馬名はシンプルに狙え…ってこと、か?