タニノフランケル

 七夕賞にタニノフランケル(牡4=角居)が出走。希代の名牝ウオッカの子で、ここまで重賞【0113】と、もう一歩。父の名をそのままいただいているので、14戦14勝の父の名を考察する。

 Frankelはゲルマン系、ユダヤ系の名字。父ガリレオと人名つながりか? 競馬の世界ではペイザバトラーエンパイアメーカーを管理したボビー・フランケルという殿堂入り調教師がいるので、そこからの命名か。他に数学者や医師など、複数の著名なフランケルさんがいる。語源はフランク人。彼らは武器としてフランカあるいはフランコンと呼ばれる「投げヤリ」を好んだため、そう呼ばれたとか。

 

チュウワウィザード

 NBAのドラフト会議で八村塁がワシントン・ウィザーズから1巡目指名を受けた。これを帝王賞へのサインとみたい。つまり1枠①番チュウワウィザード(牡4=大久保龍志)に◎だ。

 チーム名と馬名に共通するWizardは「魔法使い」。その語源は中世英語のwys(賢明な=wise)+接尾語-ard(過度に~な人)。ウィザードとは非常に賢明な人。ウィザーズもチュウワも未来は明るい。またワシントンは「華盛頓」と漢字表記するが、チュウワウィザードの母はチュウワブロッサム。Blossomは名詞で「花(華)」、動詞で「盛んになる」。ついでにバスケットボールは「籠球」。籠(かご)の字の中には龍(トレーナーの名前)がいる。

 

キセキ part2

 4歳秋・毎日王冠以降のキセキ(牡5=角居)は川田とのコンビで3→3→2→5→2着という軌跡。「善戦マン」という憐憫を含む単語では表現しきれない。キセキのスローペースを拒否する貴石のように希少なよどみない逃げ・先行によって見応えあるレースも多く「名勝負メーカー」でもあるが、白星がなく…。とはいえ敗戦の責を帰するところ、つまり帰責はキセキにも騎手にもなく、あと足りないのは運だけ。こういう敗者をAlmost Winnerという。2人(1人と1頭だが)寄り添って走って、うまくいかない日だって2人でいれば晴れだって!明日、今日より笑顔になれる――。さあ奇跡を!

 

アッシェンプッテル

 童話は世界中に類話がある。シンデレラは虐げられる主人公、履物・靴、玉の輿(身分上位者との婚姻)を共通項として、時代は古代ギリシャ(ロードピス)から、場所は日本(糠福米福)中国(葉限)から欧州各国まで幅広い類話があり、欧州類話の共通項は「灰」。シンデレラ(英語)、サンドリヨン(仏語)、チェネレントラ(伊語)と名前に「灰」の意味を持つ語が含まれる。なお全部馬名でもある。ドイツ語のシンデレラことアッシェンプッテル(牝3=奥村豊)がユニコーンSに登録。グリム童話にも、この名で収録されている。Asheが「灰」だ。差し馬で灰かぶりでなく、砂かぶり。金の靴ならぬアルミの蹄鉄が脱げませんように。

 

ソーグリッタリング

 安田記念をインディチャンプが射止めるなど、今開催の東京はステイゴールド産駒の活躍が目立つ。ルックトゥワイスの目黒記念Vもあり、重賞【2・1・1・1】。エプソムCも複数頭出し予定でステイ祭りの可能性十分。大将はソーグリッタリング(牡5=池江)だ。

 馬名は父ステイゴールド(輝き続ける)からの連想。So Glitteringでこれ単独だと「めっちゃぴかぴかしてる」とか「超きらきら光ってる」ぐらいの口語的な訳になると思う。ただし「ソーグリッタリングの2連勝がきらめくようなぴかぴかの勝ち方なのでエプソムCでも有力である」…というso~that構文ならもう少し丁寧な訳になる。

 

杏目、野田優驥

 残念ながら香港最強馬の来日はならなかった安田記念だが、それでもメンバーは濃い。美麗傳承(ビューティージェネレーション)擁する香港競馬も注目しているので、出走馬の香港名を紹介しよう。

 杏目は「シィンムー」といった発音でアーモンドアイ。野田優驥(ダノンプレミアム)と一騎打ちの下馬評。「驥」は千里を走る馬のことで、香港の馬名に頻出する字。火之呼喚がロジクライ。叫んで火の精霊を呼び出すのだろうか?よく分からん。グァンチャーレは「イタリアの塩漬けして熟成させた豚のほお肉」のことで、香港名は意式美食――「イタリアの食べ物」と意味を理解しつつ解釈は大ざっぱだ。

 

リオンリオン

 最強のライバルにさあ牙をむけ。リオンリオンこそ今年のダービーで展開を支配する馬だ。馬名はフランス語。Lion Lionとつづると明らかだが、リオンはライオン(ネコ科の大型獣)のこと。つまりライオン・ライオンと繰り返している。同音反復には親愛が込められるものだ。フランス語で犬(シアン)をトゥトゥと呼べばニュアンスは「ワンワン」、馬(シュヴァル)をダダと呼べば「おウマさん」というように。ならばライオンをリオンリオンと呼べば――ガオー?獅子丸? ごめん、分からん。